D・HEROの話

我々世代は遊戯王と共に育った。遊戯王に育てられたと言っても過言ではない。

水曜日は6時30分に遊戯王GXを見て、土曜日の朝は遊戯王デュエルモンスターズの再放送を見た。友達と遊ぶときには常にデッキを持ち歩き、何かにつけてはデュエルしていた。公園でもデュエルしていた。もはや中毒。

そんな生粋の遊戯王キッズであった人間なら必ず記憶に残っているカードやカテゴリーがあるだろう。遊城十代に憧れてE・HEROが好きだった人もいるだろう、ブルーアイズホワイトドラゴンやレッドアイズブラックドラゴンといったかっこいいドラゴンに心奪われた人もいるだろう、ブルーアイズアルティメットドラゴンやサイバーエンドドラゴン、三幻神、三幻魔といったとんでもない攻撃力に惹かれるのは誰もが通る道かもしれない。

そんな中俺はDHEROというカテゴリーに惹かれた。それはもう強烈に惹かれた。惹かれすぎてブログを開設して文章を書いている。時間は12時30分を回ろうとしている。

DHEROの魅力を語るには遊戯王GXの話をしなければならない。遊戯王GXにおいて、主人公でありE・HEROデッキ使用する遊城十代は無敵であった。どんなに不利な状況であっても、どんなに相手が強力であっても、決して負けることはなかった(多分)

そんな遊城十代の元に颯爽と登場したのがエドフェニックスである。主人公と同じE・HEROデッキを使用しながらもそのエースカードは主人公とは違う。遊城十代を正義のE・HEROとするならエドフェニックスは悪のE・HERO。このミラーマッチに当時の小学生は心を奪われていた(多分)このデュエルはまさしく死闘であった。主人公の使うシャイニングフレアウイングマンが装備カードの力を得てエドフェニックスのエースカードであるシャイニングフェニックスガイを打ち破った瞬間、誰もが十代の勝利を確信したはずだ。

しかしエドにとってそこまでは茶番にすぎなかった。罠カード「D-タイム」を発動したエドが手札に加えたカードはDHERO。そこからこのデュエルは一変する。圧倒的な攻撃力を誇るシャイニングフレアウイングマンを軽く処理するデビルガイ、時間を操ると称され搦め手で十代を追い詰めるダイヤモンドガイ、「明鏡止水の心」とのコンボで無敵の耐久を誇るダイハードガイ、その全てを束ねて圧倒的な破壊力をもつドレッドガイ。これらのカードを前に無敵だったはずの遊城十代が敗北を喫するのであった。

この光景に少年すぎやまの心は鷲掴みにされた。たかだか攻撃力1400のモンスターが魔法やトラップを駆使して無敵の主人公を圧倒する。あの三幻魔を打ち破った主人公が手も足も出ずに敗北する。「攻撃力こそ正義。強いはパワー、パワーは強い」という小学生の考えを否定する「大人の遊戯王」がそこにあったのだ。